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[全文公開] 新人経理マンが学ぶ 会社経理のイロハ 第1回 利息の受取り

  石井 幸子

【略歴】
 平成12年に勝島敏明税理士事務所(現 デロイトトーマツ税理士法人)入所後、平成15年に税理士登録。平成24年に石井幸子税理士事務所開業、現在に至る。
 主な著書に、「接待飲食費を中心とした交際費等の実務」(税務研究会)、「会社分割実務必携」(法令出版、共著)、「連結納税の鉄則30」「消費税の鉄則30」(中央経済社、共著)、「消費税率引上げ・軽減税率・インボイス業種別対応ハンドブック」(日本法令、共著)等がある。
(2019年4月現在)

ベテラン経理マンが日々の業務で行う会社経理(会計処理)も、入社間もない新人経理マンにとっては、馴染みのないものです。

ここでは、主に、新人経理マンが習得すべき会社経理の基本知識を分かりやすく紹介していきます。

1.はじめに

今回は、会社が利息を受け取った場合の会計処理を解説します。利息の受取りと言っても、利息の種類によって税金の控除(源泉徴収)の有無などに違いがあり、それに伴い会計処理も異なるため注意が必要です。

2.取引の概要

利息の受取りには、金融機関からの預金利息の受取りや、貸付金の利息の受取りなどがあります。このうち金融機関からの預金利息は、その利息の総額から源泉所得税(15%)と復興特別所得税(2037年まで 0.315%)が差し引かれた金額が預金口座に入金されます。

定期預金や定期積金の利息については、預金利息の計算書で利息の総額と源泉徴収された税額が記載されていることが一般的ですが、普通預金の利息については、金融機関によって取扱いが異なり、利息の総額や源泉徴収された税額の記載がなく、通帳には入金額のみが記載されているケースが多いように思われます。この場合には入金額をもとに、利息の総額や源泉徴収された税額を算出する必要があります。

3.具体例(預金利息の受取り)

税研銀行の普通預金口座に8,469円の預金利息が入金されました。

4.会計処理

次のように会計処理を行います。

(借方) 普通預金 8,469 (貸方) 受取利息 10,000

法人税等 1,531


5.解説

預金利息の入金額は、利息の総額から源泉所得税(15%)及び復興特別所得税(0.315%)を控除したあとの金額です。図解すると次のようになります。

預金利息を受け取った際に、源泉徴収された源泉所得税及び復興特別所得税の金額の記載がない場合には、次の算式により預金利息の入金額から源泉徴収された税額を計算します。

入金額÷84.685%×15.315%=源泉徴収された税額(1円未満の端数切捨)

今回のケースに当てはめると、次のようになります。

8,469円÷84.685%×15.315%=1,531円(1円未満の端数切捨)

この源泉徴収された税額は、法人税の前払いとしての性格を有するため、損益計算書の末尾に表示される法人税等(法人税・住民税・事業税)の勘定科目で会計処理をします。

ところで、預金利息を受け取った場合の会計処理について、受取利息を総額で計上した場合でも、源泉所得税などを控除した後の差額で計上した場合でも、損益計算書の利益に与える影響額に違いはありませんが、総額での計上が適切な会計処理となります。

総額を計上した場合
(借方) 普通預金 8,469 (貸方) 受取利息 10,000

法人税等 1,531


受取利息(収益)10,000円-法人税等(費用)1,531円=利益に与える影響額8,469円

差額を計上した場合
(借方) 普通預金 8,469 (貸方) 受取利息 8,469

受取利息(収益)8,469円=利益に与える影響額8,469円

損益計算書の利益に与える影響額が同じであるにも関わらず、総額で会計処理をする理由は次の2つです。

源泉徴収された源泉所得税及び復興特別所得税の金額を明確にすること。
消費税の課税区分の処理において、受取利息は総額が非課税売上、源泉徴収された源泉所得税及び復興特別所得税の金額は不課税取引であるため、源泉所得税控除後の差額で計上した場合には、「受取利息」の金額が少なくなって、非課税売上の金額が過少となり課税売上割合が正しく算定されないこと。

なお、法人が平成27年12月31日以前に支払いを受けた利息については、源泉所得税及び復興特別所得税のほかに利子割(5%)が特別徴収されていましたが、現在は、法人に対する利子割は廃止され、特別徴収は行われていません。

6.ポイント

預金利息は入金額ではなく総額で計上する。
源泉徴収された税額が記載されていない場合には自分で計算する。
源泉徴収された税額は法人税の前払いとして処理する。
消費税の課税区分は、受取利息は非課税売上、源泉徴収された税額は不課税取引で処理する。