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[全文公開] 減価償却資産の範囲と美術品

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世界的に有名な楽器が減価償却資産に当たらないと税務調査で指摘されたことが過日報道された。減価償却資産には当然,器具・備品は含まれる。ただ,時の経過によりその価値が減少しないものは除かれる。そのため,希少価値の高い楽器は価値が下がらず,減価償却資産に当たらないとされたようだ。

これと同様の考え方をするものが美術品等だ。取得価額が1点100万円以上の場合は原則,非減価償却資産となる。だが,「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」である場合,例外的に,減価償却資産として取り扱うことが可能だ。具体的には,次の要件を全て満たす美術品等が該当する。①不特定多数の者が利用する会館のロビーや葬儀場のホール等の場所の装飾用や展示用(有料公開を除く)で,②移設困難で当該用途のみの使用が明らか,③他の用途に転用すると仮定した場合,設置状況や使用状況からみて美術品等としての市場価値が見込まれない。これら①~③を満たす一例として考えられるのが,“彫刻(モニュメント)”だという。宗教的な施設におけるロビー等(①)で,壁面の一部又は台座等に固定されていて(②),希望者に販売をするなどのときに美術品としての価値が見込めない(③),という場合が想定できるようだ。

一方,取得価額が1点100万円未満の場合は原則,減価償却資産に該当する。ただし,「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く」とされている( 法基通7-1-1 )。これは例えば,高価な素材が大部分を占める小型の工芸品のように素材の経済的価値が取得価額の大部分を占めるようなものが該当するようだ(『法人税基本通達逐条解説〈九訂版〉』佐藤友一郎編著553頁参照)。