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[全文公開] 利益積立金額のマイナスと資本配当

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株主に対する配当は,利益剰余金による配当(利益配当)が一般的だが,当期の業績を勘案し,資本剰余金による配当(資本配当)を行う法人も少なくない。

資本配当を交付された法人は,いわゆるプロラタ計算により「資本の払戻し」部分の金額を算定することになるが,この金額は,交付された資本配当の金額が上限となる。

ここでいうプロラタ計算とは,資本配当のうち,有価証券の譲渡対価と認識する「資本の払戻し」部分を算定するもの( 法令23 ①四)。交付された資本配当のうち,「資本の払戻し」部分を超える金額が「みなし配当」として益金不算入となる( 法法24 )。

この点,プロラタ計算の結果,交付された資本配当の金額を上回る「資本の払戻し」部分が算定されることがある。具体的には,払戻法人(資本配当を行った法人)の利益積立金額がマイナスのケースだ。

例えば,X社が,完全子会社Y社(資本金等の額1,000,利益積立金額マイナス200)から資本配当400を受けた場合,プロラタ計算により「資本の払戻し」部分は500(=資本金等の額1,000×(減少した資本剰余金400/簿価純資産価額800))と算定される。

「資本の払戻し」部分500が,資本配当400を上回る結果となるが,こうした場合の「資本の払戻し」部分の金額は,資本配当と同額の400と認識することになる。

というのも,法令上,交付された資本配当のうち,「資本の払戻し」部分を 超える 金額が「みなし配当」と規定されているため( 法法24 ①),「資本の払戻し」部分が,資本配当を上回る場合には,「みなし配当」がゼロとなる。

「みなし配当」は,ゼロが下限であり,マイナスになることはあり得ないことからして,「資本の払戻し」部分は,交付された資本配当の金額が上限となるわけだ。