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[全文公開] 「報告の求め」と申告漏れの可能性

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取引実態がわかりにくい場合に事業者等から情報を集めていく情報照会手続。「協力要請」と「報告の求め」の二本柱で構成されており,報告の求めは,協力要請に応じてもらえず,一定の要件を満たす場合に行使できる。

行使要件の1つには「申告漏れの可能性」というものがあり,報告の求めの対象となる取引(特定取引)が次の①~③のいずれかに該当する場合をいう。「①特定取引と同種の取引を行う者に対する国税に関する過去の調査において,その取引に係る課税標準が年間1,000万円超の者のうち,その半数以上に申告漏れが認められる場合」,「②特定取引で,国税の申告漏れを生じさせることが推測される場合」,「③不合理な取引形態により,国税の申告漏れを生じさせることが推測される場合」。

 このうち①の“同種の取引”とは,過去に調査がない特定取引でも,“同種の取引”として取引内容等に共通の特徴があれば,①の場合に該当するものとして,報告の求めの対象とみなすことができるというものだ(国税通則法第7章の2関係通達3-6)。

例えば,仮想通貨交換業者の場合で考えると,ビットコインの取引とイーサリアムの取引は“同種の取引”に該当するという。どちらかの取引が①の基準を満たしていれば,もう一方の取引も①の基準を満たすことになる。

なお,そのほかの行使要件は「収集手段の補充性」(他の方法による情報収集が困難であること),「報告対象の特定可能性」(事業者側が報告対象となる者の範囲を特定できること),「報告目的の正当性」,「特定事業者等の事務負担に配慮」があり,これらすべてを満たす必要がある。