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[全文公開] 法人税基本通達等の主要改正項目について(2年7月3日)

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令和2年6月30日付課法2-17ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)による主な改正点は,次のとおりです。

第1 法人税基本通達関係

1 子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた国際的な租税回避への対応(新設)

法人が,一定の支配関係にある外国子会社等(以下「他の法人」といいます。)から受ける配当等の額(みなし配当の額を含みます。)がある場合において,その配当等の額がその配当等の額に係る株式の帳簿価額の10%相当額を超える場合には,一定の適用除外要件に該当する場合を除き,その配当等の額に係る株式等の帳簿価額から,その配当等の額のうち益金の額に算入されなかった金額に相当する金額(益金不算入相当額)を減算する措置が設けられました(以下この措置を「子会社株式簿価減額特例」といいます。)( 法令119の3 ⑦, 119の4 ①)。

この帳簿価額から減算する金額については,一定の要件を満たすことにより,その配当等の額のうち特定支配後増加利益剰余金額超過額に達するまでの金額(益金不算入相当額に限られます。)とされています( 法令119の3 ⑧)。

また,本特例の適用回避を防止するため,関係法人の組織再編や孫会社から関係法人への配当が行われた場合などについて,所要の調整が行われています( 法令119の3 ⑪⑫)。

○ 対象配当等の額が資本の払戻しによるものである場合の譲渡原価の計算(基通2-3-4の2,2-3-4の3 新設)

法人が資本の払戻し等によるみなし配当の額を受け,当該みなし配当の額が対象配当等の額に該当することにより子会社株式簿価減額特例の適用を受ける場合には,当該払戻し等に係る株式の譲渡原価の額は,みなし配当の額に係る基準時の直前における帳簿価額から益金不算入相当額を減算した後の金額を基礎として計算することを明らかにしています。

また,自己の株式又は出資を取得したことによりみなし配当の額を受ける場合の譲渡原価の計算についても同様に取り扱われることを明らかにしています。

◯ 外国子会社から受ける配当等がある場合の益金不算入相当額(基通2-3-22の2 新設)

法人が受ける対象配当等の額又は同一事業年度内配当等の額が 租税特別措置法第66条の8 第2項《内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例》の規定の適用を受けるものである場合の益金不算入相当額は,同項の規定の適用を受けないものとして 法人税法第23条の2 第1項《外国子会社から受ける配当等の益金不算入》の規定により計算した場合の益金不算入相当額となることを明らかにしています。

○ 基準時事業年度後に対象配当等の額を受ける場合の取扱い(基通2-3-22の5 新設)

法人が対象配当等の額をその基準時の属する事業年度終了の日後に受ける場合には,その受ける対象配当等の額に基づき当該基準時の属する事業年度に遡って子会社株式簿価減額特例の適用があることを明らかにしています。

ただし,当該対象配当等の額を受けることが確実であると認められる場合には,その受けることが確実であると認められる対象配当等の額に基づき当該基準時の属する事業年度の確定申告において適用することとしても差し支えないことを明らかにしています。

◯ 内国株主割合が90%以上であることを証する書類(基通2-3-22の6 新設)

他の法人の設立の時から特定支配日までの期間を通じて内国法人等による他の法人の株式等の所有割合が90%以上であることを証する書類とは,設立の時の株主の状況及び当該設立の時から特定支配日までの株主の状況が確認できる書類のそれぞれをいい,例えば,これらの状況が確認できる商業登記簿,株主名簿,株式譲渡契約書又は有価証券台帳等はこれに該当することを明らかにしています。

◯ 他の法人が外国法人である場合の円換算(基通2-3-22の7 新設)

法人が 法人税法施行令第119条の3 第7項第2号,第8項及び第11項《移動平均法を適用する有価証券について評価換え等があった場合の一単位当たりの帳簿価額の算出の特例》の規定の適用を受ける場合において,他の法人が外国法人であるときにおけるこれらの規定の計算の基礎となる金額の円換算については,当該計算の基礎となる金額につき全て外貨建ての金額に基づき計算した金額について円換算を行う方法又は当該計算の基礎となる金額について全て円換算後の金額に基づき計算する方法など,法人が継続して同一の方法により円換算を行っている場合にはこれを認めることを明らかにしています。

◯ 帳簿価額が減額された場合における評価換えの直前の帳簿価額の意義(基通9-1-12の2 改正)

法人が受ける対象配当等の額に係る基準日が当該事業年度終了の日である場合において,当該対象配当等の額について子会社株式簿価減額特例の適用を受けたときは, 法人税法第33条 第2項《資産の評価損の損金不算入等》に規定する「評価換えの直前の当該資産の帳簿価額」は子会社株式簿価減額特例の適用後の帳簿価額となることを留意的に明らかにしています。

2 「時価の算定に関する会計基準」への対応(改正)

「時価の算定に関する会計基準」の導入に伴う金融商品会計基準等の改正を踏まえ,令和2年度税制改正において,以下のとおり売買目的有価証券の時価評価金額の計算等の見直しが行われました。

(1) 売買目的有価証券の時価評価金額

  • イ 市場有価証券(取引所売買有価証券,店頭売買有価証券,取扱有価証券及びその他価格公表有価証券をいいます。)について事業年度終了の日における公表最終価格がない場合の時価評価金額は,直近公表最終価格に基づき合理的な方法により計算した金額とすることとされました( 法令119の13 ①一~三)。

    ロ 上記イの市場有価証券以外の有価証券(株式又は出資を除きます。)の時価評価金額は,その有価証券に類似する銘柄の有価証券について公表された事業年度終了の日における最終の売買価格又は利率その他の指標に基づき合理的な方法により計算した金額とすることとされました( 法令119の13 ①四)。

    ハ 上記イ及びロの合理的な方法により算出した金額について,その方法を採用した理由その他その算定の基礎となる事項を記載した書類を保存しなければならないこととされました( 法令119の13 ②)。

(2)  短期売買商品等(暗号資産を除きます。)の時価評価金額及びデリバティブ取引に係るみなし決済損益額について合理的な方法によりこれらの金額を算出した場合についても,上記(1)と同様に一定の書類を保存しなければならないこととされました( 法令118の8 ②, 法規27の7 ④)。

◯ 合理的な方法による価額の計算(基通2-3-32 新設,2-3-39 改正,2-3-69 新設)

売買目的有価証券の時価評価金額を計算するための合理的な方法による価額の計算は,令和元年7月4日付企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に定める算定方法などにより計算すること,その計算の基礎となる市場価格,利率等の指標は,客観的なものを最大限使用し,最も適切な金額となるよう計算することを明らかにしています。

未決済デリバティブ取引のみなし決済損益額及び短期売買商品等の時価評価金額の計算についても同様です。

◯ 売買目的有価証券の時価評価金額に関する書類の保存(基通2-3-34,2-3-40,2-3-70 新設)

合理的な方法により価額を計算する場合に保存が必要となる書類とは,当該合理的な方法の採用の意思決定に関する資料及び市場価格や利率などの計算の基礎となる事項を記した資料がこれに該当することを明らかにしています。

なお,これらの書類には,第三者から入手した価格が合理的な方法により計算していると認められる場合の当該第三者から入手した価格が記載された書類が該当することを明らかにしています。

未決済デリバティブ取引のみなし決済損益額及び短期売買商品等の時価評価金額に関する書類の保存についても同様です。

第2 租税特別措置法通達関係

特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例(オープンイノベーションに係る措置)(新設)

青色申告法人で新事業開拓事業者と共同して特定事業活動を行うものが,令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に出資により特定株式を取得し,かつ,これをその取得した日を含む事業年度終了の日まで有している場合において,当該特定株式の取得価額(100億円が上限)の25%以下の金額を特別勘定を設ける方法により経理したときは,当該事業年度の所得の金額を上限(最大125億円)に,その経理した金額に相当する金額を損金の額に算入することとされました( 措置法66の13 ①等)。

なお,特別勘定の金額は,特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には,その事由に応じた金額を取り崩して益金の額に算入しますが,当該特定株式の取得から5年を経過した場合には,益金の額に算入しないこととされました( 措置法66の13 ⑫)。

◯ 特定株式の取得の日の判定(措通66の13-1 新設)

特定株式の取得の日は,金銭の払込みによる増資により取得した株式はその金銭の払込みの期日(当該払込みの期間が定められている場合には当該払込みを行った日)によること,新株予約権の行使により取得した株式はその新株予約権を行使した日によることを明らかにしています。

◯ 当該事業年度に取得した特定株式の評価減をした場合の帳簿価額の減額(措通66の13-2 新設)

特定株式について帳簿価額を減額した場合において,税務上別銘柄とされる各株式のいずれの帳簿価額から当該減額した金額を減額するかは,法人の計算によることを明らかにしています。

◯ 取得の日から5年を経過した特定株式に係る特別勘定を取り崩した場合の取扱い(措通66の13-10 新設)

共同化継続証明書に取得の日から5年を経過した特定株式として記載されたものに係る特別勘定の金額については,その後に当該特別勘定の金額を取り崩した場合であっても,その取り崩した金額は益金の額に算入しないことを明らかにしています。

第3 その他

上記のほか,既存の取扱いについて,「時価の算定に関する会計基準」の導入に伴う金融商品会計基準等の改正を踏まえた見直しなど,所要の取扱いの整備を行っています。