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[全文公開] 賃上げ税制と雇用調整助成金

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従業員等の休業手当等の助成として,国から支払われる「雇用調整助成金」。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,同助成金の支払を受けた事業者も多いだろう。

雇用調整助成金は,所得拡大促進税制(賃上げ・投資促進税制)における“給与等”から控除する必要があるため,同制度の賃金要件における“継続雇用者給与等支給額”からも控除することになる。

同制度における賃金要件は,「雇用者給与等支給額>比較雇用者給与等支給額」と「(継続雇用者給与等支給額-継続雇用者比較給与等支給額)/継続雇用者比較給与等支給額≧1.5%(大企業:3%)」である( 措法42の12の5 ①②)。

雇用者給与等支給額は「国内雇用者への給与等」,継続雇用者給与等支給額は「継続雇用者(当期と前期の各月に給与等の支給を受けた国内雇用者等)への給与等」であり( 措法42の12の5 ③四,六等),いずれも 所得税法28条 1項の“給与等”がベースとなっている。

雇用調整助成金は,“給与等”から控除すべき「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当するため( 措法42の12の5 ③四, №3621 ・5頁),継続雇用者給与等支給額からも控除することになるが,同助成金の支払は,休業した従業員全体に係るトータルの金額が一括で支払われる仕組となっている。

そのため,継続雇用者給与等支給額から雇用調整助成金を控除する上では,“継続雇用者に対応する雇用調整助成金の金額”を合理的に計算することが必要となる。

合理的な計算に係る法令上の規定はないものの,実務上は,例えば,継続雇用者給与等支給額から「被保険者の人数に占める継続雇用者の人数の割合を雇用調整助成金に乗じた金額」を控除する方法などが考えられるという。