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[全文公開] 買いたたきと運用基準の改正

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下請事業者に対する親事業者の不当な扱いを規制する下請代金支払遅延等防止法(下請法)。下請代金の減額や報復措置などが禁止行為で掲げられており、このうち「買いたたき」の運用基準が先般改正されている(令和4年1月26日付改正「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」第4の5(2)ウ、エ)。下請事業者から取引価格の引上げを求められた場合、親事業者は書面やメール等により回答するなどの対応が望まれそうだ。

買いたたきは、「…通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」(下請法4①五)と規定され、下請代金の額が、①著しく低い、②不当に定められているという2つの要件を満たした場合、買いたたきに該当するおそれがある。

改正前は、上記②の例示として、「下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず、一方的に従来どおりに単価を据え置くこと」が掲げられていた。改正後は、昨今の石油価格等の上昇や従業員の賃上げ要請などのコスト上昇分を、取引価格へ転嫁する必要性が生じていることから、「一方的に…」の状況がより明確化されている。

例えば、下請事業者から労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコスト上昇分を取引価格へ反映することを求められた場合、親事業者は「[A]価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来通りに取引価格を据え置くこと」、「[B]価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で下請事業者に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと」が追記されている。ただし、買いたたきに当たるか否かは、前述の①著しく低いという要件と併せて総合的に判断されることとなる。

なお、既報の「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」( №3688 )で買いたたきについて、買手と売手が協議した上で双方納得する必要性が示されており、この場合の対応方法としても一つの参考になるという。