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[全文公開] 手形交換所の廃止と印紙税

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これまで紙の手形・小切手の交換業務を担ってきた全国各地の手形交換所が廃止され、11月4日からは、全国銀行協会が運営する「電子交換所」において全国の手形交換が行われる。手形等に係る利用者の手続方法や印紙税の課税関係に変わりはない。

従来、紙の手形や小切手が金融機関に持ち込まれた場合、各地の手形交換所を経由して搬送され、支払金融機関との手形交換を行ってきた。今後は、各金融機関に持ち込まれた紙の手形等をスキャンした画像データを、電子交換所を通じて送受信し、交換業務を行う。

利用者は引き続き紙の手形等を持ち込むことができるが、金融機関によっては手形等の様式や手数料等が変更される。手形等の記入時に金額欄への捺印や券面へのメモ書きが禁止されること等にも注意したい。なお、手形の裏書は券面へのメモ書きに当たらず引き続き対応できるという。

今回電子化されるのは金融機関間の手形交換業務であり、利用者が手形等を作成・交付する時点では紙であることに変わりはないため、引き続き印紙税の課税対象となる( 印法4 ①)。

一方、手形等に代わる電子的決済手段として利用が広まっている電子記録債権は、印紙税の課税対象外だ。電子記録債権とは、電子債権記録機関が作成する記録原簿に電子記録することにより発生・譲渡等が行われる金銭債権のこと。紙の手形に係る交付・保管コストや紛失・盗難リスクなどがなく、分割譲渡が可能などのメリットがある。

経産省が2月に公表した「取引適正化に向けた5つの取組」では、令和8年までに紙の約束手形を廃止することが検討されるなど、電子化が進められている。約束手形を利用している企業においては、今後の支払手段を検討する必要があろう。