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[全文公開] 雑損控除と特定非常災害

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令和5年度税制改正大綱では、雑損控除の繰越控除制度の見直しが示された。令和5年4月1日以後、特定非常災害によって生じた雑損失については、繰越控除期間が5年に延長される予定だ。

雑損控除とは、災害や盗難等により生活に通常必要な資産に生じた損害のうち、一定額を所得金額から控除できるもの( 所法72 )。控除額のうち、所得金額から控除しきれない金額がある場合、現行では、翌年以後3年間に繰り越して控除することができる(繰越控除制度)。

一方、特定非常災害とは、著しく異常かつ激甚な非常災害として政令で指定される災害のこと。これまで平成23年の東日本大震災や、令和元年の台風19号などを含む全7例が指定されている。現行では、特定非常災害によって損害を被った場合の税制上の措置として、消費税の課税方式を変更する場合の届出の提出期限に関する宥恕措置( 措法86の5 )や、被災代替資産等を取得した場合の特別償却( 措法11の2 等)などの特例が設けられている( №3615 )。今回の見直しで繰越控除制度に関する特例が追加される格好だ。

改正後、5年繰越しの対象は、あくまで特定非常災害に係る雑損失についてのみ。1年間で特定非常災害と、特定非常災害以外の災害の損害を被った場合、それぞれで繰越控除期間が異なる。そのため、例えば「特定非常災害の雑損失が4年目以降も残っていたのに控除を失念した」「特定非常災害以外の雑損失を5年繰り越せる」など誤解がないよう注意されたい。

なお、令和5年度税制改正大綱では、特定非常災害によって生じた純損失についても繰越控除期間の5年延長が示された。5年繰越しの対象は、被災割合や申告の種類によって異なる( 本号10頁 )。