※ 記事の内容は発行日時点の情報に基づくものです

[全文公開] 医療費控除と補填金

( 69頁)

医療費控除を適用する場合、保険契約等に基づく医療費の補填があれば、医療費合計額から保険等による補填額を差し引いて計算する。差引計算は、補填される医療費ごとに行うが、同一疾病内の一部の医療費に対してのみ補填がある場合も考え方は同様だ。

医療費控除の計算は、「実際に支払った医療費の合計額-保険金等の補填額-(10万円又は総所得金額200万円未満の場合は総所得金額等の5%)」( 所法73 ①)となる。補填額の控除は、その補填の対象とされる医療費ごとに行い、支払った医療費を上回る部分の補填額は、他の医療費から差し引く必要はない(質疑応答事例「支払った医療費を超える補填金」)。

同事例の場合、同一年中に入院費と歯の治療費を支払った後、入院費を超える入院給付金の支払を受けても、“異なる疾病”において補填の超過分を歯の治療費から差し引く必要はないとしている。

だが、仮に、異なる疾病ではなく、“同じ疾病”により検査費・手術費・入院費等を支払った後、その補填額が入院費のみに係るものの場合、医療費の合計額から補填額を差し引くべきか、補填の対象となった入院費分のみを差し引くべきか判断に迷うこともあるようだ。

例えば、総所得金額400万円の個人が同じ疾病により検査費(1万円)、手術費(12万円)、入院費(6万円)を支払い、入院給付金15万円を受け取った場合で考える。補填額15万円はあくまでも入院費に係る支給のため、入院費を上回る部分の補填額9万円(=15万円-6万円)は、その他の医療費から差し引く必要はない。つまり、医療費の合計額19万円から入院費に係る補填額相当分6万円を差し引き、医療費控除の対象額は3万円(=19万円-6万円-10万円)となる。

なお、保険金等で補填される金額とは、医療費の補填を目的に支払われたものをいい、生命保険契約等で支給される入院給付金、健康保険等で支給される高額療養費、出産育児一時金等が該当する。