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[全文公開] 企業担当者が知っておきたい! 税務関係書類の作成ヒント 第1回 法人設立届出書

OAG税理士法人  

1.はじめに

必要な届出を提出期限までに提出しなければ、本来納税者が選択できたであろう措置の恩恵を受けることができなくなるなど、企業が損害を被る場合があります。そのため、実務では簿記や税務等の知識に加え、各種届出などの手続きに関する知識が必要不可欠です。

しかしながら、実際の企業の現場では、新たに入社してきた社員が上記の税務関係書類の届出に関する知識を持ち合わせていることは少なく、また、上司が部下を教育する時間を十分に確保することも難しいのが現状です。届出によっては、国税庁のホームページで記載例を確認できるものもありますが、特に経験の浅い担当者の場合、「必要な届出はこれであっているだろうか、必要な記入事項を網羅できているだろうか、他に必要な届出はないだろうか。」といったように対応に迷う場合が多いかと思います。

そこで、本連載は、経験の浅い企業の税務・経理担当者を対象に、企業、税理士が使用することの多い届出書・申請書等について、制度の概要、記入・提出の誤りやすい点、誤りを防ぐポイント等を解説してまいります。

2.法人を設立した場合の手続き

まず、法人を設立した場合に必要となるのが「法人設立届出書」です。会社は設立した年度から、税務署(国)や地方自治体に税金を納める義務があります。そのため、会社を設立したこと及び会社の概要を税務署に知らせることを目的として、「法人設立届出書」を提出しなければなりません。

なお、「法人設立届出書」は、株式会社に限らず、すべての法人が必ず提出する必要があり、提出時期、提出先、添付資料は以下一覧表のとおりになります。東京23区内であれば、都税事務所に提出すれば区役所に提出する必要はありません。また、各種届出のひな形は「法人設立届出書 様式」などのキーワードをネット上で検索すれば、国税庁や各地方自治体のホームページ等から簡単に入手できます。

【提出時期、提出先、添付資料一覧表】

項目 設立場所:提出時期 提出先 添付資料

法人設立届出書

国内すべて:設立の日(登記)から2か月以内

税務署

定款等の写し
設立の登記簿謄本 (任意)

法人設立・設置届出書
(※自治体によって名称が異なる場合があります)

東京都:事業開始の日から15日以内

その他:設立から2か月以内

(自治体により異なります)

都道府県税事務所

定款等の写し
設立の登記簿謄本

23区:不要

その他:設立から2か月以内

(自治体により異なります)

市町村役場

定款等の写し
設立の登記簿謄本

3.記載例と作成のポイント


(1) 記載例③~⑥以外の項目については、定款等・登記簿謄本の内容に沿って記載します。

(2) 納税地、代表者住所については、事業所所在地と同じであれば「同上」と記載することも可能です。

 なお、「納税地」欄に税務署の住所を記入する誤りが見受けられるため注意してください。

(3) 記載例①の法人設立の日は、登記の日となります。ただし、行政官庁の許認可により設立する法人は許認可の日となります( 法人税基本通達(以下、「法基通」と記します。)1-2-1 )。

事業年度は、設立年月日が月の半ばである場合であっても、定款等に記載された会計期間を記載します。

 なお、会計期間末日が2月の場合は、うるう年の関係から、末日を2/28と記載するのか、2/29と記載するのか悩まれる方もいらっしゃるかと思いますが、国税庁等の公表資料(記載要領等)には、この点について明記されておりません。この場合には、具体的な日付を記載せずに「2月末日」と記載しても誤りではないので参考にしてください。

(4) 記載例②は、設立時の資本金の額又は出資金の額が1千万円以上の場合には記載が必要になります。また、記載した場合は「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要はありません。なお、法人新設時における消費税納税義務の有無の判定については、別回にて解説いたします。

(5) 記載例③は、本店のみであれば記載不要です。

(6) 記載例④は、設立の形態が新設の場合、「5その他」の数値を丸で囲み、カッコ内に「新設」「新規開業」などと記入します。

(7) 記載例⑤は、設立後、事業開始した年月日又は事業開始見込みの年月日を記載します。なお、多くの場合は法人設立の日となります。ただし、行政官庁の許認可により設立する法人は許認可の日です( 法基通1-2-1 )。

(8) 記載例⑥は、従業員がいる場合には「有」を選択してください。

4.まとめ

本稿では、連載第1回目として、法人を設立した場合に必要となる「法人設立届出書」について解説しました。法人設立届出書は、すべての法人が提出する義務があります。提出時期、提出先、添付資料を確認の上、本稿で取り上げた「作成のポイント」を押さえて作成にあたっていただければと思います。なお、紙幅の関係から、一般的な新設法人が記載すべき内容についてのみを解説しており、法人設立届出書について、すべてを詳細に記載することはできませんでしたが、本連載を通して、経験の浅い担当者の届出・申請書作成業務の一助となれば幸いです。