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[全文公開] 空き家譲渡特例と老人ホーム入居

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いわゆる空き家譲渡特例とは、相続等により取得した一定の被相続人居住用家屋(空き家)やその敷地等を譲渡した場合に、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除できるものだ( 措法35 ③)。

同特例の対象となる被相続人居住用家屋とは、昭和56年5月31日以前に建築された等の要件を満たし、原則として相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていた家屋であることを要件としている( 措法35 ⑤)。ただし、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどの特定事由に該当する一定の場合は、相続開始直前に被相続人がその家屋を居住の用に供していなかった場合も同特例の対象となる。

特定事由とは、要介護認定等を受けて老人ホームや介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅等に入所した場合又は障害者支援区分の認定を受けて障害者支援施設等に入所した場合が挙げられる( 措令23 ⑧)。老人ホーム等の施設ではなく、介護を行う親族等の家に転居して亡くなったような場合には、特定事由に該当せず、特例の対象とならない。

また、特定事由により被相続人が居住していない間の被相続人居住用家屋については、被相続人の相続開始直前まで引き続き被相続人の家財の保管等に使用されていたことや、相続開始直前まで被相続人以外の居住の用に供されていないこと、事業・貸付に使用されていないこと等も要件とされる( 措令23 ⑨)。

適用に当たっては、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受ける必要がある。申請時には、被相続人が要介護認定等を受けていたことを証する書類や老人ホーム等入所時の契約書等、被相続人居住用家屋の電気・水道又はガスの契約名義と使用中止日が確認できる書類等が必要となるため、相続人等は譲渡前から早めの検討と準備が必要となろう。