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[全文公開] 本年6月実施の定額減税に係る年末調整における宥恕措置の有無は?

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定額減税の実施を含む令和6年度税制改正法が3月28日、参議院本会議で可決・成立した。本年6月から、従業員等に支払う給与等の源泉徴収税額から減税額を控除していく月次減税事務の対応について、企業の事務負担の観点から、年末調整の際に一括して減税(控除)を可能とする対応を求める声もあったが、国会審議を経て、改正法令にそうした宥恕措置等は設けられなかった。

既報のとおり( №3790 )、6月から月次減税事務の対応が必要となるため、好評配信中のオンラインセミナー(視聴方法等は №3794 ・7頁等)等もご参考のうえ、減税対象の従業員等やその同一生計配偶者等の抽出等の準備を進めたい。

正しい月次減税事務の実施を

企業は、令和6年6月1日時点で勤務している従業員等(合計所得金額1,805万円以下の居住者)から扶養控除等申告書の提出を受けている場合に、同日以後最初に支払う給与等に係る源泉徴収税額から減税額を順次控除する「月次減税事務」に対応する必要がある。

月次減税事務に対応するには、対象となる従業員等やその同一生計配偶者及び扶養親族の抽出、控除額等の管理が必要だ。年末には、その時点の減税額等に基づき年間の所得税額を精算する「年調減税事務」を実施するため、年末調整で一度に減税対応を済まそうと考える向きもあったが、【参考】のとおり、減税額を控除した額が法令上正しい源泉徴収税額であり、対象者に月次減税を実施しないと税額を過大徴収することになる。

本誌による自民党税制調査会の宮沢洋一会長へのインタビューでも、減税の実施時期について「6月という時期は大事なタイミングです。ボーナス商戦に火をつけ、見通しが明るくなってきた日本経済を成長軌道にのせるため、景気を刺激する良いタイミングだと思います」と話している( №3793 )。6月からの月次減税により、従業員等は早期に減税の恩典を受けることができる。

【参考】
「令和6年6月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除等」( 措法41の3の7 ①)の要旨
 令和6年6月1日において給与等の支払者から主たる給与等(給与所得者の扶養控除等申告書の提出の際に経由した給与等の支払者から支払を受ける給与等)の支払を受ける者である居住者の同日以後最初に当該支払者から支払を受ける同年中の主たる給与等につき徴収すべき所得税の額は、当該所得税の額に相当する金額から給与特別控除額を控除した金額に相当する金額とする

ベンダーはシステム更新等を対応

複数のシステムベンダーでは既に、給与計算ソフト等のシステム更新等により、月次減税事務などに対応する旨を公表している。5月にシステム提供するという案内もある。

減税対象となる従業員等の抽出、その同一生計配偶者や扶養親族を含めた減税額や減税後の所得税額の算出、減税を反映した給与明細等の出力などに対応する旨を明らかにしたベンダーがある。