大阪・関西万博の入場券の購入費用に係る税務上の取扱いQ&A③
来る4月13日から10月13日までの184日間、大阪市の夢洲で2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開催される。大阪・関西万博の入場券は電子チケットが基本だが、昨年10月13日から「紙チケット・チケット引換券」が全国のコンビニエンスストアや旅行代理店等で販売されている。
大阪・関西万博の電子チケット購入費用に係る法人税及び消費税の取扱いは、本誌 №3803 ・ 3805 でお伝えした。今回は「紙チケット・チケット引換券」の購入費用について、消費税の仕入税額控除の適用を受けるために保存すべき書類等を紙チケット・チケット引換券の種類別に確認した。
<紙チケット・チケット引換券の種類>
17. 昨年10月13日から販売されている大阪・関西万博の「紙チケット・チケット引換券」について教えてください。
紙チケット・チケット引換券には次の3種類があり、それぞれ購入できる場所が異なります。
① 紙チケット
来場日時が指定されたQRコード付チケット(【参考1】)。会場の入場ゲートでQRコードをかざすことで、そのまま入場できます。旅行代理店等で購入可能です。
② チケット引換券(来場日時指定あり)
来場日時が指定されたQRコード付チケットへのチケット引換券(【参考2】)。会場の「ゲート前チケット引換所」でQRコード付チケットに引き換える方法と、チケット引換券に記載されたシリアルコードをスマートフォン等に入力し、チケットIDに引き換えて公式サイトから電子チケット(QRコード)を取得する方法があります。予約した日時に会場の入場ゲートでスマートフォン等に表示されたQRコードをかざすことで入場ができます。
コンビニエンスストアに設置されている店頭端末で購入できます(チケット事業者サイトを経由したものを含みます。以下同じ)。
③ チケット引換券(来場日時指定なし)
来場日時が指定されていないQRコード付チケットへのチケット引換券(【参考3・4】)。チケットの引換え・取得方法は②と同様です。会場の入場ゲートでQRコードをかざすことで入場ができます。当日でも入場できますが、11時以降でなければ会場内に入ることができません(大型連休等の予約必須日及び混雑時は入場不可)。
コンビニエンスストアに設置されている店頭端末や旅行代理店等で購入できます。
<紙チケット・チケット引換券に係る消費税の課税関係>
18. 大阪・関西万博の紙チケット・チケット引換券の購入費用に係る消費税の課税関係を教えてください。
大阪・関西万博の入場券は消費税法における「物品切手等」に該当します( №3805 )。従来から販売されていた電子チケットのほか、昨年10月13日から販売を開始した「紙チケット・チケット引換券」のいずれも物品切手等に当たります。
消費税法上、物品切手等の発行は不課税、物品切手等の譲渡は非課税とされているため、購入段階で課税仕入れとすることはできません。実際に役務又は物品の引換給付を受けた時にはじめてその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります( 消法6 ①、消法別表2四ハ、 消基通6-4-5 、 11-3-7 )。
<簡易インボイス記載事項の充足>
19. 紙チケット・チケット引換券は簡易インボイスの記載事項を満たしていますか。
紙チケットとチケット引換券の種類により、簡易インボイスの記載事項を満たす方法は異なります。
① 紙チケット
紙チケット自体は簡易インボイスの記載事項を満たしていません。
紙チケットは旅行代理店等で購入可能であり、販売元である旅行代理店等が「媒介者交付特例」を適用している場合は、旅行代理店等から、紙チケットとは別に旅行代理店等の名称や登録番号等が記載されたインボイス(簡易インボイス)が交付されます。
なお、旅行代理店等が発行する領収書等の様式は各社によって異なります。仮に領収書等に「課税資産の譲渡等を行った年月日(開催年月日等)」の記載がない場合は、領収書等と紙チケット(日付)を併せることでインボイス(簡易インボイス)の記載事項を満たすことになります。
② チケット引換券(来場日時指定あり)
来場日時の指定があるQRコード付チケットへのチケット引換券は、その引換券自体では簡易インボイスの記載事項を満たしていませんが、後述するホームページの記載内容と併せることで簡易インボイスの記載事項を満たします。
コンビニエンスストアの店頭で発券されるチケット引換券(【参考2】)には、適格請求書発行事業者(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、以下「万博協会」)の「登録番号」や「適用税率」が記載されていません。この不足する記載事項を補うために、チケット引換券には販売受託会社(チケットぴあ)のホームページのURL(「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)チケットID引換サイト」)が記載されています。URL先には「適格簡易請求書の記載事項の補足」として適格請求書発行事業者(万博協会)の「登録番号」や「適用税率」が掲載されており、この該当箇所を電磁的記録又は書面でチケット引換券と併せて保存することで簡易インボイスの記載事項を満たすことになります。こうした取扱いについては、令和7年2月25日に更新された国税庁「インボイスの取扱いに関するご質問」問Ⅳにも掲載されています( №3841 )。
同問Ⅳによると、売手がホームページの該当箇所を、各税法に定められた保存期間が満了するまで随時確認可能な状態で提供しているなど一定の要件を満たす場合、買手において必ずしも当該電磁的記録又は書面を保存せずとも、その保存があるものとして差し支えないこととされています。
本件の販売受託会社(チケットぴあ)では、当面の間、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)チケットID引換サイト」に「適格簡易請求書の記載事項の補足」を掲載する方針ですが、掲載期間は現在未定のようです。したがって、記載事項の補足について画像データや書面で保存することをおすすめします。
○ 「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)チケットID引換サイト」に掲載されている補足事項
(適格簡易請求書の記載事項の補足)
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 登録番号:T9120005020700 適用税率:10% |
③ チケット引換券(来場日時指定なし)
来場日時の指定がないQRコード付チケットへのチケット引換券は、旅行代理店等やコンビニエンスストアで購入可能であり、販売元によって記載事項は異なります。
旅行代理店等が発券するチケット引換券(【参考3】)は、簡易インボイスとして求められている全ての記載事項が記載されています。
他方、コンビニエンスストアが発券するチケット引換券(【参考4】)は、適格請求書発行事業者(万博協会)の「登録番号」や「適用税率」が記載されていませんが、上記②のチケット引換券(来場日時指定あり)と同様に、チケット引換券に記載された販売受託会社のURL「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)チケットID引換サイト」に掲載されている「適格簡易請求書の記載事項の補足」を電磁的記録又は書面でチケット引換券と併せて保存することで簡易インボイスの記載事項を満たすことになります。
<ホームページでインボイス(簡易インボイス)の記載事項を補足する方法>
20. インボイス(簡易インボイス)の記載事項が不足していた場合、ホームページに掲載することで記載事項を満たせるとのことですが、具体的にはどのような方法になりますか。
次の3つの要件を満たすような場合、入場券や領収書とホームページに掲載した記載事項とが関連性を有するものとして、併せてインボイス(簡易インボイス)の記載事項を満たすこととなります。
(1) 入場券等にインボイス(簡易インボイス)の記載事項の一部を記載
(2) 入場券等にホームページのURLを記載
(3) (2)のURLにアクセスしたページにインボイス(簡易インボイス)記載事項の不足部分を掲載
<仕入税額控除の適用を受けるための対応>
21. 事業者(引換給付を受けた事業者)が紙チケット・チケット引換券の購入費用について仕入税額控除の適用を受けるためには、どのような対応が必要になりますか。
紙チケットとチケット引換券で対応は異なります(仕入税額控除の適用を受ける方法が複数認められます)。
① 紙チケット
旅行代理店等から交付を受けたインボイス(簡易インボイス)の保存等をすることで仕入税額控除の適用を受けることができます。
② チケット引換券(来場日時指定あり) 及び
③ チケット引換券(来場日時指定なし)
次のいずれかの対応で仕入税額控除の適用を受けることができます。
Ⅰ 入場券等回収特例を適用する
チケット引換券を会場のゲート前チケット引換所でQRコード付チケットに引き換えた場合は、チケット引換券が回収されるため「入場券等回収特例」の適用を受けることができます。その場合、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます( 消令49 ①一ロ)。
Ⅱ チケット引換券を保存する
チケット引換券をスマートフォン等でチケットIDに引き換えて電子チケットの交付を受けた場合は、手元に引換券が残ることになります。この場合は引換券を保存することで仕入税額控除の適用を受けることができます。
なお、コンビニエンスストアが発券したチケット引換券では不足する記載事項があるため、ホームページに掲載された記載事項を併せて保存する必要があります。
Ⅲ 媒介者交付特例により発行されたインボイス(簡易インボイス)を保存する
販売元である旅行代理店等やコンビニエンスストアが媒介者交付特例を適用している場合、旅行代理店等やコンビニエンスストアの名称でインボイス(簡易インボイス)が交付されます。このインボイス(簡易インボイス)を保存することで仕入税額控除の適用を受けることができます。
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