概要
<通達本文>
(1) 外貨建ての債権債務等の会計処理については,企業会計上は,昭和46年8月の円の変動相場制移行,同年12月の平価切上げ,その後の変動相場制再移行などに対応して企業会計審議会が「意見第三」から「意見第五」,「意見第六」にわたる一連の個別意見をその都度公表したが,昭和54年6月26日に「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨建会計基準」という。)を一般的基準として公表するに至り,一応の会計処理上の慣行が定着した。
その後,外貨建会計基準については,国際経済環境の変化や先物外国為替取引の自由化,通貨スワップや通貨オプション取引の増加,国際会計基準への対応などの諸事情を踏まえて,平成7年5月26日にその改訂が行われた。さらに,平成11年10月22日には,同年1月22日に公表された金融商品会計基準等を踏まえて大きな基準改訂が行われた。
(2) 一方,法人税でも,昭和50年度の税制改正において法人税法施行令に外貨建債権債務の期末時における円換算に関する規定が定められた。その後,会計基準等の改訂等を踏まえて,平成5年,平成10年に,為替予約差額の期間配分の規定が創設又は整備された。
ただ,ここまでの外国為替換算関係の法制度は,外貨建債権債務の期末換算に関するもののみで,外貨建取引の換算規定や外貨建債権債務以外の外貨建資産等の期末換算の規定はなかった。平成12年度の税制改正においては,会計上の平成11年の外貨建会計基準の改訂にも配慮しつつ,外貨建取引の換算規定及び外貨建有価証券など外貨建債権債務以外の外貨建資産等の期末換算規定が定められた。その主な内容は次のとおりである。
① 外貨建取引の円換算 外貨建取引(外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入,役務の提供,金銭の貸付け及び借入れ,剰余金の配当その他の取引をいう。)を行った場合には,その外貨建取引の金額の円換算額は,その外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算された金額とすることになる(法61の8①)。
② 外貨建取引の円換算の特例
イ 先物外国為替契約等により外貨建取引によって取得し,又は発生する資産又は負債の金額の円換算額を確定させた場合には,その外貨建資産等を先物外国為替契約等の為替相場により円換算するとともに(令122の10①)。
ロ 先物外国為替契約により外貨建資産・負債の取得又は発生の基因となる外貨建取引に伴って授受する外国通貨の金額の円換算額を確定させた場合には,その外貨建資産・負債については,先物外国為替契約の為替相場により円換算をする(令122①)。
③ 外貨建資産等の期末換算
法人が事業年度終了の時に有する外貨建資産等は,次の表の区分に応じそれぞれ次の方法により円換算する(法61の9②)。
また,その事業年度の所得金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入した金額は,翌事業年度の所得金額の計算上,損金の額又は益金の額に算入するとともに,翌事業年度開始の時における外貨建資産等の帳簿価額は,その為替換算差額(差益)に相当する金額を減算し,又は為替換算差額(差損)に相当する金額を加算した金額とし,洗替計算を行う(令122の8①④)。
(注)1 換算方法の選定に関する届出がない場合には,(※)を付した方法により換算することになる(令122の7)。
2 「発生時換算法」とは,外貨建資産等の取得又は発生の基因となった外貨建取引の金額の円換算に用いた為替相場により換算した金額をもって事業年度終了の時のその外貨建資産等の円換算額とする方法をいい,「期末時換算法」とは,事業年度終了の時における為替相場により換算した金額をもって事業年度終了の時の外貨建資産等の円換算額とする方法をいう(法61の9①一イ,ロ)。
3 「短期外貨建債権債務」とは,受取又は支払の期限がその事業年度終了の日の翌日から1年を経過した日の前日までに到来するものをいい,「短期外貨預金」とは,満期日がその事業年度終了の日の翌日から1年を経過した日の前日までに到来するものをいう(令122の4一,五)。
(3) また,平成13年度の税制改正において,適格分割等により期末時換
算法の対象となる外貨建資産等を移転した場合には,その適格分割等の日の前日の属する事業年度終了の時における期末時換算法を適用した後の帳簿価額により引き継ぎ,分割承継法人等においてその為替換算差額相当額の戻入れをする等,適格組織再編成が行われた場合の外貨建取引の換算等について所要の措置が講じられている(令122の8②③⑤)。
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