概要
<通達本文>
(1) 企業会計上,費用は,いわゆる発生主義により認識される。発生主義とは,財貨又は用役の費消(滅失を含む。)に基づいて費用を認識するものである。
また,企業会計では損益計算を企業活動の成果(収益)と努力(費用)を対応させた差引計算として性格づける。そしてこのような対応関係を満足するように計算することを要求する計算原則が費用収益対応の原則である。
つまり,発生主義により認識した費用は,費用収益対応の原則により各会計期間に割り当てられ計上されることとなる。
この費用と収益の対応形態には,売上高と売上原価のように,商品や製品を媒介とする個別的(直接的)対応と,販売費,一般管理費等のように,会計期間を媒介とする期間的(間接的)対応とがある。なお,損失についてはその性質上,費用収益の対応という考え方になじまないため,その発生の事実をとらえて計上することになる。
(2) 一方,法人税法における損金の額については,第22条第3項《各事業年度の所得の金額の計算の通則》では,①売上原価,完成工事原価その他これらに準ずる原価の額,②販売費,一般管理費その他の費用の額,③損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの,と三つに区分して掲げられている。
また,この損金の額は,別段の定めがあるものを除き,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されることとされており(法22④),損金の額をどの事業年度に計上すべきかについては,上記の企業会計上の発生主義及び費用収益対応の原則が妥当するものと解されている。
すなわち,上記①の売上原価,完成工事原価等については,個別的対応によりその収益が計上された事業年度に,上記②の販売費,一般管理費等については,期間的対応により発生した事業年度に,上記③の損失については,発生した事業年度に,それぞれ損金の額として計上されることになる。
なお,上記②の販売費,一般管理費等については,法人税法第22条第3項第2号括弧書では「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く」と規定し,法人税法では「債務確定基準」を採ることが明らかにされている。
この債務確定基準は,法人税法が特に定める場合を除き,引当金や見越費用等の計上を認めない趣旨と解されている。
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