介護付有料老人ホーム入居一時金の返還請求権と相続財産(1-1-1(2))

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<問>

1 夫甲(85歳)とその妻乙(83歳)は,昨年12月の始めまで乙所有の家屋(その敷地は夫甲の所有)に2人で居住していましたが,乙は介護認定4級(軽度の認知症)の者で,日常生活の介護が必要な者でしたので,専ら夫甲がその介護に従事しておりました。そして,当該妻乙には預貯金が約80万円程度があるのみ(収入は国民年金以外にはない。)で,専ら夫の収入と資産を原資として生活をしておりました。 しかし,夫甲が年末になって体調を崩し,妻乙の介護をすることが困難となってきましたので,夫甲は,妻乙を社会福祉法人Aが営む介護付有料老人ホームに入居(居室は15㎡程度の単身用で,所有権や賃借権はありません。また,入居に関する権利を他人に譲渡することもできません。)させることとして,昨年の12月末に入居させていました。 この老人ホームでは,入居者が死亡するか,又は契約解除により退去する日まで継続して介護を受けることができますが,この老人ホームへの入居契約は妻乙が契約者(契約代理人は長男丙)として当該契約を締結し,その入居に関する入居一時金1,000万円及び入居後の各種サービスの提供に係る料金として月額23万円の必要費用の一切は,夫甲が自分の預貯金から支払っていました。そして,この入居一時金については,60か月で均等償却するものとされており,入居者である契約者がその入居後60か月以内に死亡又は契約解除をして退去した場合に限り,その未償却分相当額を入居者又は身元引受人(長男丙)に返還するものとされていますが,その他の場合には一切返還金はありません。

2 ところが,翌年の1月になって,夫甲も1人での生活が困難となったために妻乙が入居している同じ介護老人ホームの別室に入居することになりました。 その入居については,妻乙の契約とは別途の契約を同老人ホームと夫甲との間で妻乙の場合と同様の内容の契約を締結し,その入居に係る入居一時金1,000万円及び入居後の各種サービスの提供に係る料金(月額23万円の必要費用等)の一切は,夫甲が自分の預貯金から引き出して支払っていました。 しかし,夫甲は,その介護老人ホームに入居した5か月後の6月になって急死しました。その甲の死亡に伴い,甲の入居に関して甲が支払った入居一時金のうち,未償却額相当額(1,000万円×54/60=900万円)が,当該契約に基づいて甲の長男丙に返還されました。妻乙は,甲の死亡後も引き続き同老人ホームに入居を続け,介護を受けております。

(質問事項)

甲の死亡に関しては,甲には多少の遺産がありましたので,甲の相続人は相続税の申告義務がありますが,上記の入居一時金に関して,甲が甲の入居に関して支払った入居一時金の未償却分相当額の返還金については,相続税の課税価格に算入されますか。

また,妻乙の入居に関する妻乙の契約に基づいて,夫甲が支払った入居一時金に関する権利については,甲の相続に係る妻乙及び長男丙の相続税の課税価格に算入する必要があるのでしょうかおたずねいたします。

(全文 文字数:6032文字)

1 夫甲の入居一時金について

甲の死亡に係る甲の………

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