遺産分割のやり直しと相続等によって取得した株式の取得価額等(1-1-2(5))

※ 本コンテンツは刊行日時点の情報に基づくものです

<問>

(事実関係)

個人Aは,平成20年8月に,亡父から上場株式(現物)を相続し,遅滞なく名義書換えを行い,現物株のまま継続して保有していました。

当該上場株式を含む遺産分割協議書を作成した当時(平成21年1月),遺産分割に関する相続人間での合意は,少なくとも書類上,形式上は有効に成立していました。

その後,平成30年3月までの間に,年々相続人間の関係が悪化しておりましたが,近年になって平成20年当時の遺産分割協議の内容について,A以外の相続人からたびたび不満が表明されるようになってきました。こうした状況に嫌気が差したAは,このたび,一旦相続した当該上場株式を手放し,相続人BとCに譲ることを決意しました。

Aが当該株式をBとCに譲る方法について,すべての相続人が分割協議をやり直し,当初からBとCが当該株式を相続したものとする方法が一番納得出来ると主張し,この方法を希望しています。ただし,相続後,かなり時間が経過しており,こうしたやり方に税務上問題があるなら,Aが一旦相続した株式を,今年3月にBとCに贈与する方法でもやむを得ないと考えています。

なお,平成20年の相続時は,遺産額が基礎控除額の範囲内であり,相続税の申告はしていません。また,当該上場株式の名義書換えを行った平成13年以降に生じた株式の配当金は年間40,000円程度でしたが,この配当金はAの収入として同人が受け取っていました。

この配当所得については,申告不要のため確定申告はしていません。

さらに,当該株式を今年3月にAからB,Cに譲る時点での財産評価基本通達に基づく評価額は,B,C分ともに単価が3,000円です。

 《B,Cが当該株式を取得後,譲渡した場合の取得費について参考となる事実》

イ.平成16年8月 亡父の証券会社からの購入時の取得単価4,000円

ロ.平成20年8月(相続開始) Aの相続時の財産評価基本通達に基づく評価額(税務上妥当とする金額。)5,000円

ハ.今年3月(遺産分割のやり直し) AからB,Cに譲る際の財産評価基本通達に基づく評価額(税務上妥当とする金額。)3,000円

(質問)

(1) 相続人の希望するとおり,分割協議をやり直して,当初からBとCが当該株式を相続したものとする。その間,Aが収受した配当金については,本来BとCに帰属すべき配当金を,Aが贈与を受け,享受したと考える。 このように考えた場合,税務上何か問題が生じますか。

(2) B,CがAから当該上場株式を取得後,直ちに市場を通じて売却した場合に,B,Cの譲渡所得の計算上,取得費はいくらになりますか。以下の①,②のように考えても差し支えありませんか。

(全文 文字数:6544文字)

相続税の課税関係について,遺産分割協議の合意解除と再分割協議………

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