【最新動向】IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂に関するIASB審議の概要 Vol.1 ライセンスと履行義務の識別

有限責任あずさ監査法人 IFRSアドバイザリー室 シニアマネジャー 松田麻子

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Ⅰ.はじめに

2014年5月28日に公表されたIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下IFRS第15号)は,2017年1月1日以降開始事業年度 より適用されます。IASBとFASBは,IFRS第15号およびASCトピック606(以下トピック606)の円滑な適用を進めるために,合同の移行リソース・グループ(Transition Resource Group,以下TRG)を組成し,その討議を通じて ,適用上課題となりうる論点の把握に努めています。IASBとFASBは,既に開催された3回の会議で討議された論点のうち次の2つについて,2015年2月18日に合同会議を開催し,今後の対応を検討しました。

①知的財産のライセンス供与

②履行義務の識別

本稿は,上記2つに関して検討された論点のうち,IASBがIFRS第15号(適用指針を含む本文)及びIFRS第15号に付属する文書(結論の根拠,設例)の一部修正を決定した論点を取り上げて,審議で決定した内容の概要を解説します。

1.ライセンス供与に関する適用指針

(1)知的財産に著しい影響を与える活動

①関連するIFRS第15号の規定の概要

ライセンスの供与...