公認会計士　篠原　真

最近，米国の財務責任者向けのサイトCFO.comに載っていた，ドッド＝フランク法に基づく報酬クローバックと実際の取引による利益調整（real-transactions management）に関する研究についての記事が目に付いた（"Adoption of Clawbacks Tied to Earnings Manipulation）。報酬クローバックとは，不正な財務報告などにより決算書の修正再表示の必要が生じた場合に，誤ったデータに基づいてインセンティブ報酬を受け取った役員から，本来支払われるはずであった額を超える分を回収することである。ここで問題とされていたのは，利益調整（earnings management）の中でも不正な財務報告につながるような旧来の会計的な利益調整（accruals management）ではなく，例えば研究開発費を予定通りには支出しないなど，実際の支出を抑えることで目標利益を達成する実際の取引による利益調整である。利益調整の中でも，この実際の取引による利益調整が増えており，短期的な目標利益を達成するために研究開発費を抑制することは，企業の長期的な競争力に影...