書評 町田 祥弘著 『内部統制の知識<第3版>』

(日経文庫刊/本体1,000円+税)

 公認会計士 山田 善隆

( 48頁)

「内部統制」という言葉は,今では我が国のビジネス・パーソンの間にもすっかり浸透し,常識となった感がある。しかし,本書の初版が出版された頃(2007年3月)は,内部統制の概念と新たに導入された制度の理解について混乱が見られた。当時は,多くの書籍が出版されたが,そのなかでも信頼できる書籍の一つとして,本書の初版を手に取られた方も多いのではないだろうか。

今般,2度目の改訂を経て,日経文庫から「内部統制の知識<第3版>」が出版されたため,ご紹介したい。

1.著者について

本書の著者は,永年にわたり監査論の研究を重ねて来た青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授の町田祥弘氏である。同氏は,2004年に金融庁企業会計審議会に内部統制部会が組成された当時から専門委員として我が国の内部統制報告制度の制度化の議論に深く関与してきており,まさに,我が国における内部統制の第一人者といえる。

2.第3版の改訂点

第3版では,2015年施行の改正会社法の施行規則が改正されたことを受けて,会社法における内部統制に関する説明が改訂されるとともに,2011年に導入された内部統制報告制度における簡素な手続等の説明が追加...