基礎から学ぶ―IFRS保険会計 第15回 有配当契約の会計処理

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 蓑輪 康喜
 公認会計士 西田 誠司

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1.はじめに

保険契約には,保険契約者が払い込んだ保険料を原資として資産運用を行い,当該資産の運用成績によって保険契約者に対する支払総額が変動するものがある。このような契約は一般的に「有配当契約」と呼ばれている。国際会計基準審議会(以下,IASBという)が公表した公開草案「保険契約」(ED/2013/7,以下,「再公開草案」という)では,有配当契約の性質に応じて異なる会計処理が提案されている。これらの提案は,有配当契約における資産と負債の会計上のミスマッチを軽減するものとして評価されたが,一方で,複雑すぎて,適用することは実務的に困難であるとして多くの懸念事項がコメントとして寄せられた。

本稿では,有配当契約の会計処理について,再公開草案における提案の概要と再公開草案に対して寄せられたコメント,懸念事項とそれに対応するために提案された代替案を説明する。なお,本文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

2.有配当契約の会計処理

再公開草案では,企業に裏付け資産の保有を要求しており,保険契約者に対する支払いと裏付け資産からのリターンとの連動を定めている有配当契約について,当該契約に含まれる履行キ...