書評 西川 郁生著「会計基準の最前線」

(税務経理協会刊/本体3,000円+税)

新日鐵住金株式会社  池田 悟

( 28頁)

本書は,西川先生が企業会計基準委員会(ASBJ)の委員長を務めた7年(2007年4月から2014年3月)の間に執筆した26の論稿をまとめたものであり,当時,財団法人財務会計基準機構(FASF)/ASBJの機関(季刊)誌である『季刊 会計基準』に掲載されたものである。

会計に携わってきた方々には季刊誌の発行当時にその多くを読まれた方も多いと思う。私も2007年秋から2013年春にかけてASBJの専門委員等を務めていたこともあり,西川委員長のお考えが綴られた「チェアマンズ・ボイス」を毎号拝読していた。改めて本書を通読し,当時を鮮明に思い返すとともに,ASBJ委員長として時代の変遷とともに変わるASBJへの期待を受けとめ,全力で取り組んでこられた著者の考えと,会計基準策定主体であるASBJにとって激動期であった著者の委員長時代を概観できる書籍と感じている。

なお,本書では掲載当時の環境下での論旨を尊重するため,当時のままの論稿を時系列に沿って掲載し,各論稿の後に「§○を振り返って」という小文で著者が当時を振り返って補足・注釈を加えている。この小文が読者にとって執筆当時の論稿を適切に理解する上で大...