IFRSをめぐる動向 第75回 IFRS第15号 公表後のIASBの議論

あらた監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,2014年5月に公表された国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)に関して,その後に行われているIASBとFASB(以下,両審議会)の議論について取り上げます。

IASBは,昨年5月,FASBと共同でIFRS第15号を公表しました。この基準は,2017年1月1日以後開始する事業年度から強制適用となります。IASBは,この適用を円滑に進めるための方策として,FASBと合同で収益移行リソースグループ(以下,TRG)を創設しました。TRGは,新たな収益基準の導入によって生じる実務上の諸問題についてメンバーの見解を共有し,両審議会に対してその内容を伝えることを目的として議論を行っています。

両審議会は,これまでに行われたTRGの議論を踏まえ,異例ともいえる,未だ強制適用前の基準に係る改訂について検討を行っています。すでに,両審議会は発効日の延期に関する公開草案を公表しており,また,FASBはライセ...