監査・保証実務委員会実務指針第91号「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」の解説

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 田中淳一

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平成27年4月30日付けで日本公認会計士協会より,監査・保証実務委員会実務指針第91号「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」が公表された。本実務指針は,工事進行基準を適用する企業の財務諸表の監査において,関連する監査基準委員会報告書の要求事項を適切に適用するために留意する事項を適用指針として取りまとめたものである。監査基準委員会報告書の要求事項及び適用指針と併せて適用するための指針を示すものであり,新たな要求事項を設けているものではない。

本稿では,本実務指針に関し,公表された背景及び留意点につき,解説する。

なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見であることを申し添える。

1.本実務指針公表の背景

企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という)は,工事契約及び受注制作のソフトウェアに関して,施工者における工事収益及び工事原価の会計処理並びに開示に適用される。工事契約とは,仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち,土木,建築,造船や一定の機械装置の製造等,基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう(工事契約会計基準第4項及び第...