「マイナンバー制度の概要と実務への影響」

KPMGコンサルティング株式会社 パートナー 伊集院 正
 マネージャー 宮脇 篤史

( 54頁)

はじめに

マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の運用開始が間近に迫ってきている。

具体的には,2015年10月から日本国内の全住民に対し,一人ひとり異なる12桁の番号が付与・通知され,2016年より当番号を用いた行政事務が開始される予定である。

同様の制度は既に幾つかの諸外国でも導入されており,米国(社会保障番号),スウェーデン(個人識別番号)などは歴史も古く,官民問わず幅広い分野で利用されている。

日本においては比較的限定された範囲でマイナンバーの取扱いがなされる予定であるが,事業者にとっても具体的な対応事項が発生する。本稿では,マイナンバー制度の概要および事業者への影響を整理したうえで,事業者ひいては経理財務者が実施すべき対応事項とその留意事項について解説を行う。

1 マイナンバー制度の概要

(1).マイナンバーとは ~個人番号と法人番号~

マイナンバー制度は,所定の目的のもと,個人もしくは法人に対して一意の社会保障・税番号が付与される制度である。個人に対するものが「個人番号」,法人に対するものが「法人番号」であり,前者だけをマイナンバーと呼ぶ場合もあれば,双方含めてマイナンバーと呼ぶ場合も...