判例を読む(下)反対株主の株式買取請求に係る株式買取価格の評価における非流動性ディスカウントの考慮の可否

~最高裁決定平成27年3月26日~

 弁護士・公認会計士・CFA協会認定アナリスト 中村 慎二

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【目次】
一 はじめに 掲載号 No.3220
二 本事案の概要および争点
三 第1審決定,抗告審決定および本決定の内容
四 本決定の分析(1)
五 本決定の分析(2) 掲載号 No.3221
六 関連論点(サイズ・プレミアム) 本号
七 関連論点(評価モデル)
八 本決定の適用範囲

六 サイズ・プレミアム

本件では,収益還元法における資本コストとしてサイズ・プレミアムが考慮されている。この点については,地裁段階では申立人がサイズ・プレミアムを考慮するのは相当ではないと主張していたものの地裁決定の中では特に個別の判断が示されず,さらに抗告にあたっては抗告理由とされず,抗告審以降は非流動性ディスカウントの有無のみが争点となっていたようであるため,サイズ・プレミアムについて裁判所の判断が具体的に示されたわけではないが,一応の合理性が確認されたとの評価は可能であると考えられる。

サイズ・プレミアムは,規模の小さな企業に対する投資は規模が大きな企業に対する投資よりも倒産のリスクが高いことから,投資家が一般的により高い投資利回りを要求することを根拠とする追加的なリスク・プレミアムである。しかし,サイズ・プレミアムについては算定...