東芝の不正な財務報告問題の論点整理 ― 何が問題で何を問うべきなのか ―

青山学院大学大学院 教授 町田 祥弘

( 08頁)

(株) 東芝(以下,東芝)の不正な財務報告問題が連日大きく報道されている。東芝は,経団連会長を輩出するなど,140年にわたる社歴を見ても,まさに日本を代表する大企業であり,日本経済が低迷する時期にあっても好業績を上げる優良企業と見られてきただけでなく,早くから委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)を選択してガバナンスにも積極的に取り組む,まさに自他ともに認める日本のリーディング・カンパニーであった。それが不正な財務報告を行っていたというばかりか,予定されていた定時株主総会の開催延期に追い込まれ,財務諸表の虚偽記載の累計額が1,500億円を超えるとして,歴代CEOの責任問題に発展している。まさに"Accounting Scandal"(NYタイムズ)と呼ぶべき事態である。本稿は,編集部からのご依頼により,東芝の不正な財務報告問題について,今後の本誌における検討の端緒として,論点整理を行うものである。なお,本件は,日々,事態が変化していくものであることから,東芝第三者委員会から「調査報告書」の要約版(以下,調査報告書)が公表された2015年7月20日夜の時点での情報に基づいて執筆した...