金融会計の論点シリーズNo.2 新金融商品で曖昧になる資本・負債の境界線
フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司
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はじめに:負債を増やすべきか,株主資本を増やすべきか
ROEを最大化するには,負債を増やすべきか,それとも株主資本を増やすべきか。資本構成比率のあり方は,経営の効率性・安定性の両立をめざす企業にとって大きな課題である。ところが最近,資本・負債双方の特徴をもつ新金融商品の発行が目立つ。たとえば,①新株予約権付き社債に議決権が付いたような新型株式(トヨタ),②貸借対照表上は負債だが格付け機関は50%を自己資本と認定するハイブリット債(三菱商事),③事業に失敗しても返済義務を負わないノンリコースローン(前田建設)である。
非デリバティブ証券にデリバティブを組込んだ複合金融商品は,原則として負債部分と資本部分に分別する(コンポーネント・アプローチを適用する)ことになっている。しかし,これから形式と実態が異なる非デリバティブ証券が出回ると,ROEやDebt/Equity Ratio(負債対資本倍率)の計算と解釈には,さらにEPS計算にも一層の慎重さが求められる。そこで,境界線を原点に戻って見つめ直してみよう。
動物と植物の定義からみた資本・負債の境界線
動物とは「動き,食べるもの」,植物とは「動かず,光...
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