有限責任 あずさ監査法人　パートナー　佐藤和充
有限責任 あずさ監査法人　シニアマネジャー　鶴彦太
有限責任 あずさ監査法人　マネジャー　大橋剛

この物語は，株式公開（以下，IPO（Initial Public Offering））するにあたって必要となる知識や会計処理，実務上の対応等について，とある実業家（平山文都）の起業ストーリーを通じて解説するものである。なお，文中の意見に関する部分は筆者の私見である。 ＊　　　＊　　　＊

ビジネスがスタートしてから１年が経過した。受講者数も増加し，売上も好調のため，大波会計士の当初のアドバイスに従い，とりあえずショートレビューを受けてみることにした。もちろん，お願いしたのは気心知れる大波会計士である。親戚だし，普段から人生相談も含めちょっとしたことでも相談にのってもらっている会計士なので，大した指摘はされないと思っていたが，そうではなかった。

レビュー報告書は数十枚にもわたっており，「原価計算と棚卸資産について」，「研究開発費とソフトウエアについて」，「減損会計とリースについて」，「金融商品会計基準等について」，「税効果会計について」の５項目について指摘されていた。悩んでもしょうがないので，とりあえず，指摘事項を一つずつ潰していくこととした。

まずは，「原価計算と棚卸資産について」の指摘である。...