Q&Aコーナー 気になる論点(138) IASB概念フレームワークの公開草案(4)

―公正価値測定の使い分け―

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(コメント期限:2015年10月26日)では,どのような場合に公正価値評価を行うこととしているのでしょうか。

EDでは,測定基礎として,歴史的原価と現在価額を示し,後者の1つとして公正価値を掲げています。この際,測定基礎を選択する際に考慮すべき事項として,財務情報の質的特性やコストの制約を提案しています。このうち,レリバントな測定基礎の選択については,資産・負債が将来キャッシュフロー(CF)にどのように貢献するか,それは,部分的に事業活動の性質に応じて決まること,また,資産・負債の性格の考慮を提案しています。

<解説>

EDの提案(1)‐背景

現行のIASBにおける概念フレームワーク4.55項では,財務諸表において,いくつかの異なる測定基礎が,異なる程度に,また,種々の組合せによって使用されているとして,「取得原価」「現在原価」「実現可能(決済)価額」「現在価値」を並列に示しています。

2013年7月公表のDPでは,特定の項目について測定基礎を選択する際に,それが,財政状態計算書...