国税庁新長官 中原広氏にインタビュー

国際的な租税回避等に対応
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国税庁の新長官に中原広氏が就任した。本誌では,同氏に就任の抱負,国際的な租税回避への対応などを聞いた。

‐国税庁長官就任に当たっての抱負をお聞かせください

国税庁の使命は,納税者の自発的な納税義務の履行,これを適正かつ円滑に実現することとされています。そのための重要な要素として,「納税環境の整備」,「適正かつ公平な税務行政の推進」があります。

前者は,言い換えれば,納税者サービスの充実ということだろうと思います。納税者の皆様からの質問や相談に親切,丁寧,的確に対応していくことが基本ですし,例えば,e-Taxの充実などの利便性を上げることで,自主納税をしやすくする工夫が大事です。

後者については,不公平感に繋がらぬように悪質な納税者には厳正に対応していくこと,国際的な租税回避行動にも対処していくことが重要ではないかと考えます。

また,事務運営の効率化というのも大きな課題だろうと思います。国税職員数が減少する一方で,経済取引の国際化,ICT化などにより税務調査等でも事務量が増加しています。これらに対応するためには,事務処理を効率化して,マンパワーを外向けの事務,税務調査や徴収事務等に回していかねばならないと思います。

‐多国籍企業の国際的な租税回避(BEPS)および富裕層の国際的な租税回避に対する国税庁の対応についてお聞かせください

BEPS(税源浸食と利益移転)の問題については,昨年10月にOECD税務長官会合があり,各国税務当局が対応していかなければならないということが最終声明されたところです。国税庁としても執行的な観点から積極的に関与したいと考えております。

富裕層への取組については,昨年1月から施行されている「国外財産調書制度」の周知に努めています。また,28年1月からは「財産債務調書制度」が導入されます。新しい調書では,財産の所在地や有価証券の銘柄等も記載して頂くようになりますので,きちんと情報を把握して実態を掴んでいくことが重要と思っています。

‐マイナンバー制度に対する対応をお聞かせください

今年10月からの法人番号の付番開始に向けて,業務が適切に行われるためのシステム構築が最終段階にあります。現在,運用開始に向けたテストなどを行っています。

また,国税庁は利活用機関になりますので,納税者利便の向上や行政事務の効率化等のためのシステム整備について併せて検討しております。