Q&Aコーナー 気になる論点(139) IASB概念フレームワークの公開草案(5)

-慎重性と信頼性-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(コメント期限:2015年10月26日)では,2010年の改正の際に使用しないこととした慎重性や信頼性といった質的特性について,再考しています。これらは復活するのでしょうか。

EDでは,慎重性(不確実性の状況下で判断を行う際に警戒心を行使すること)について,忠実な表現を与える際の1つの要因であり,中立性を支えるものとして,復活することを提案しています。他方,信頼性については,忠実な表現という用語の方が,この質的特性が意味している,より幅広い内容を明確に記述しているため,復活させないことを提案しています。

<解説>

IASB概念フレームワークED(1)‐概要

IASBは,2004年に,米国財務会計基準審議会(FASB)と,両者の概念フレームワークを見直す共同プロジェクトを開始し,2010年には,その一部を改正しています(BCIN.3項)。

その後,IASBは,2012年に単独で議論を再開し,2013年7月に,ディスカッション・ペーパー(DP)「財務報告に関する概念フレームワーク...