Q&Aコーナー 気になる論点(140) IASB概念フレームワークの公開草案(6)

-費用収益の対応-

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(コメント期限:2015年10月26日)では,資産・負債を重視していることから,費用収益の対応(マッチング)の考え方は示されていないのでしょうか。

EDでは,測定の不整合(会計上のミスマッチ)や測定基礎の選択といった表現によって,費用収益の対応を黙示的に考慮していると思われます。

<解説>

現行のIASBの概念フレームワークにおいて

前身の国際会計基準委員会(IASC)が1989年に公表し,IASBが2010年に一部改正した現行のIASB概念フレームワーク4.50項において,費用は,コストの発生と特定の収益項目の稼得との間の直接的な関連に基づいて,損益計算書に認識されるとしています。この処理は,一般に費用収益の対応(matching of costs with revenues)と呼ばれており,同一の取引又はその他の事象から直接的でかつ一緒に発生する収益・費用を,同時に又は結び付けて認識するとしています。

しかし,この費用収益の対応概念の適用は,資産・負債の定義を満たさない貸...