起業家物語~IPO実現に向けて~ 第4回 研究開発費及びソフトウエア会計

有限責任 あずさ監査法人 パートナー 佐藤和充
有限責任 あずさ監査法人 シニアマネジャー 鶴彦太
有限責任 あずさ監査法人 マネジャー 大橋剛

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この物語は,株式公開(以下,IPO(Initial Public Offering))するにあたって必要となる知識や会計処理,実務上の対応等について,とある実業家(平山文都)の起業ストーリーを通じて解説するものである。なお,文中の意見に関する部分は筆者の私見である。

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会計士から受けた指摘のひとつが,研究開発費とソフトウェアである。

<一年前の回想>

インターネットを通じて英会話レッスンを提供するが,入会から予約そして退会まで全てインターネットで行うことを前提にしている。人の介在は極力避け,ネット上でタイムレス,ボーダーレスで完結することを想定している。そのため,オンラインでユーザーが自由に好きな講師の好きな時間に予約でき,しかもユーザーフレンドリーなシステムの開発が必要となる。

平山は,趣味でスマートフォン用のアプリ開発もやってしまうほどPC好きで,大学1年生の時に開発した翻訳アプリ「フォン訳」がアプリストアでのセールスランキング1位を獲得した腕前を持っている。しかし,今回のシステムは,ユーザー側のみでなく講師側の予定もタイムリーに反映する必要があり,予約講師の突然の休講の際...