IASB公開草案「IFRS第15号の明確化」の解説(前編)

有限責任あずさ監査法人 公認会計士 大津 喬章

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国際会計基準審議会(IASB)は,2015年7月30日に,公開草案(ED/2015/6)「IFRS第15号の明確化」(以下「本公開草案」という。)を公表した 。本公開草案は,新たな収益認識に関する会計基準として,2014年5月に公表されたIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の一部の内容の改訂を提案するものである。本公開草案に対するコメント期限は2015年10月28日となっている。本稿では,本公開草案の内容を前後編に分けて解説する。なお,文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをお断りする。

1.本公開草案の公表の背景

IFRS第15号は,IAS第18号「収益」やIAS第11号「工事契約」などの現行の収益認識に係る会計基準を置きかえるものとして,IASBによって開発された。IASBは,米国財務会計基準審議会(FASB)と共同でこの基準の開発を行ったため,IFRS第15号は米国会計基準のTopic 606「顧客との契約から生じる収益」と実質的に同じ内容となっている。

両審議会は新基準の公表後,共同の移行リソースグループ(Transition Resource Group; TRG)を...