Q&Aコーナー 気になる論点(143) IASB概念フレームワークの公開草案(9)

―未履行契約の認識・測定―

早稲田大学大学院 会計研究科教授 秋葉 賢一

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国際会計基準審議会(IASB)が,2015年5月28日に公表した公開草案(ED)「財務報告に関する概念フレームワーク」(IASB概念フレームワークED)では,有価証券の購入契約を締結すれば,権利を有し義務を負っているため,未履行であっても取引日(約定日)に資産・負債を認識することが想定されているのでしょうか。

IASB概念フレームワークEDにおいて,ある経済的資源を交換する権利と義務から構成される未履行契約が財務諸表に含まれるかどうかは,認識規準と測定基礎の両方に依存するとしています。現行の実務において,多くの場合,未履行契約に関する資産・負債は認識されず,IASBでは,引き続きそうなると想定しています。

また,現在,特別な会計処理として定められている,金融資産の通常の方法による売買における取引日会計又は決済日会計は,いずれも実務的な方法として認められているに過ぎず,IASB概念フレームワークEDの提案とは異なる可能性がありますが,IASBは,取引日会計の使用を再検討する予定はないとしています。このため,概念フレームワークが見直されても,当面,通常の方法による売買の会計処理は変わらないもの...