金融会計の論点シリーズNo.4 金融資産・負債の認識中止(上)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

金融資産・負債の認識中止(消滅の認識)は,IFRS9号の付録では「財務状態計算書で以前認識した資産負債を取り除くこと」と定義している。しかし,その複雑さ,難解さ,企業の業績・財務比率などに与えるインパクトの大きさは収益認識規準に匹敵するであろう。金融資産は,企業にとって金利・配当収益の源泉であるが,市場変動によってその公正価値が大きく変動するリスク資産でもあるから,金融資産の譲渡にあたっては,単純な売却もあるが,様々な契約形態と金融技術を駆使して行われる。したがって,会計処理に先立って,契約形態に惑わされることなく,取引の実態は"真正売却か,それ以外か"を見究めることがまずもって肝要となる。本稿シリーズNo.4では,わが国金融商品会計基準(以下,国内基準という)が採用するアプローチと,IFRS(とくに断らないかぎり2014年版IFRS9号と2015年版IAS39号)が採用するアプローチの論点を検討したいと思う。

なお,認識中止は,IFRS9号付録Bのチャートが示すように,まず連結ベースで対応しなければならない(B3.2.1)。市場リスクに曝された金融資産と見合の負債を圧縮し財政状...