IFRSをめぐる動向 第79回 EUにおけるIFRS第9号『金融商品』のエンドースメントをめぐる動き

PwCあらた監査法人 公認会計士 山口 峰男

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,IFRSをめぐる最新の動向を伝えることを目的としています。今回は,8月に欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)から公表された,2012年及び2013年のフィールドテストのエンドースメント前のフォローアップ質問の結果を中心に解説します。なお,文中の意見にわたる部分は,筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。

2.背景

EUでは新たに制定された(改正も含む)会計基準や解釈指針は,個別にエンドースメントの手続による評価を受けることとなります。すなわち,IASBが会計基準を公表すると,欧州委員会(EC)はEFRAGに対してエンドースメントに関する勧告を求め,エンドースメントの決定について検討するため,影響分析を求めることとなります。この過程で,EFRAGは利害関係者に対して多くのコンサルテーションを実施し,会計基準がEUにおいて利用されるためのエンドースメントの条件を充足するかどうかについての勧告を行うこととなります。

EFRAGは,EU主要国の会計基準設定主体と共同して,以前よりIFRS第9号『金...