金融会計の論点シリーズNo.5 金融資産・負債の認識中止(中)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

( 32頁)

はじめに

シリーズNo.4「金融資産・負債の認識中止(上)」( 本誌No.3231 参照)では,金融資産の認識中止に係る2つのアプローチを比較検討した。今回は,その続きとして,まず国内基準(金融商品会計基準)がもつ3つの経過措置(ローン・パーティシペーション,金融負債の認識中止におけるデット・アサンプション,受取手形と割引手形の相殺消去)について,リスク管理の観点から検討する。次に認識中止の一つである金融資産・負債の相殺消去を扱う。締めくくりではIASBの概念フレームワークDP(2013年7月)が検討している認識中止の2つのアプローチについて,これまでの検討を踏まえ,実務の考え方を述べる。

1.ローン・パーティシペーションとパススルーは実質的に同じ

国内基準は,金融資産の認識中止要件として,米国基準の「倒産隔離」と同じように,譲渡人が倒産した時に備えて,譲渡人の債権者からの請求にも対抗できるよう「第三者対抗要件」の具備を求めている。

ところが,国内基準はローン・パーティシペーション(以下LPという)を経過措置として認めている。貸付金の部分譲渡において,債務者への文書による通知と了解取得する手間を...