シリーズ「学生と語る会計基準」 西川教授のポイントレッスン! 第3回 純利益と包括利益
慶應義塾大学商学部 教授 西川郁生
木村太一君 今回は「資産負債アプローチ」,「公正価値vs取得原価」に続いて「純利益と包括利益」について話していただきます。
教授 これまで我が国の関係者は純利益の重要性を主張してきました。IASBの財務諸表表示プロジェクトが当初「業績プロジェクト」と呼ばれていたときのように純利益の表示をやめるべきという議論は今ではもうありませんし,IASBの概念フレームワークの改定作業では,初めて純利益が記述される方向です。一方で,純利益の性格を変えるノンリサイクルがIFRSのいくつかの基準に規定されている等,純利益の会計処理に関する理解が我が国とIASBでは必ずしも共有されていません。
クリーンサープラス関係と 包括利益の誕生
木村君 ノンリサイクル項目があると,純利益を一度も通らない利益剰余金が出てしまうのですね。
教授 そうです。歴史的には,現在のその他の包括利益項目,つまり,以前資本直入とか純資産直入といっていた会計処理がない時代は,純利益は,包括利益でもあったわけです。
木村君 公正価値測定はするけれど,差額はOCIに持っていくという会計処理が出てきて状況が変わったのですね。
教授貸借対照表では財政状態の観点から...
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