IFRSをめぐる動向 第81回 収益移行リソースグループでの議論(7月の議論と対応,11月の議論)

PwCあらた監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,第78回に引き続き,IASBと米国財務会計基準審議会(FASB)(以下,両審議会)が共同で設置した収益認識移行リソースグループ(以下,TRG)での議論について取り上げます。

IASBは,2014年5月,FASBと共同で国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)を公表しました。この基準は,2018年1月1日以後開始する事業年度から強制適用となります。IASBは,この適用を円滑に進めるための方策として,FASBと合同でこのTRGを創設し,新たな収益基準の導入によって生じる実務上の諸問題についてメンバーの見解を共有し,両審議会に対してその内容を伝えることを目的として議論を行います。このため,TRGの議論が,公式なデュー・プロセスを経ることなく,ガイダンスや解釈指針などとして利用されることはありません。

TRGでは,2014年7月に第1回目の会議が開催されて以来,今年7月までに5回の会議が開催され,...