金融会計の論点シリーズNo.8 金融リスク管理とヘッジ会計(中)

フジタ国際会計コンサルティング(株) 代表 藤田敬司

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はじめに

前回シリーズNo.7( 本誌No.3238 参照)ヘッジ会計(上)では,金融リスク管理に使われるデリバティブの基礎,ヘッジ会計の必要性とともに,"ヘッジなし"もリスク管理の一つの方法であることを示した。今回はIAS39号を中心として,必要に応じてわが国金融商品会計基準とIFRS9号にも触れるが,ヘッジ会計の構造そのものに切り込み,その有効性と問題点を検討したい。

なお,ヘッジ会計の有用性と問題点を検討する上で念頭に置くべきは,かつて9カ国の会計基準設定主体,職業会計士団体及び旧IASCから成るJWGがヘッジ会計を全面的に否定したこと。他方,米国AAAはヘッジ会計を欠く場合の損益変動の大きさを立証した先行研究を参照しながら,経営者の意図を反映するヘッジ会計擁護論を展開したことである。こうした意見が飛び交う中で,ヘッジ会計はどのように変わりつつあるのか,次回取上げるIFRS9号においても注目したいポイントである。

ヘッジ会計はなぜ特殊か

わが国の金融商品会計基準は,ヘッジ会計を「ヘッジ取引のうち,一定の要件を満たすものについて,ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計が期間に認...