新春特別寄稿「上場制度を巡る2015年の回顧と2016年の展望」

東京証券取引所 上場部長 安井 良太

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1.はじめに

2015年の株式市況を振り返ってみると,年初より,企業業績の好調と円安を背景に堅調な相場展開が続き,日経平均株価は4月に,約15年ぶりに2万円の大台を回復したほか,東京証券取引所(以下,「東証」という)市場第一部の相場動向を示す東証株価指数(TOPIX)も8月に,約8年ぶりに一時1,700ポイントを上回る水準に達した。

夏場以降には新興国経済への懸念などから大きく調整する場面があったものの,上場会社の不断の経営努力によって,株式市況は総じて堅調な1年であったといえよう。

2.コーポレートガバナンス・コードの適用

2015年における上場制度の大きな変更点の1つは,コーポレートガバナンス・コードの適用である。コードの趣旨や内容については既に本誌で解説がなされているため詳細は割愛するが,現在は,コードの各原則に対するコンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか,実施しない場合には,その理由を説明するか)を反映した上場会社の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」が順次提出されている段階にある。

コードは実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり...