CFOインタビュー これからのCFOと経理財務部門 日清食品ホールディングス

~グローバル化とコーポレートガバナンス強化時代に果たす役割
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日清食品ホールディングス 取締役・CFO 横山 之雄氏
聞き手:慶應義塾大学商学部 教授 西川 郁生氏

進化するCFOの役割

西川氏 日本ではCFOという役職自体,置いていない会社もまだまだあるかと思いますが,御社ではCFOを置いていて,横山さんがそのお立場にあります。一般にCFOの役割として財務,経理,税務,IRあるいはCFOとしての戦略立案といったことが考えられます。横山さん自身がCFOの役割,あるいはあるべき役割についてどのようにお考えか,最初に伺いたいと思います。

横山氏 CFOの役割というと従来は「財務・経理部長」や「管理本部長」という,ファイナンスや管理部門の責任者という役割だったと思いますが,いま私がCFOという業務に就いている中で考えるCFOの役割には3つの要件があると思っています。

まずは,ゲートキーパーであり企業価値の番人,企業経営の羅針盤としてのナビゲーター,さらにCEOを補佐して行くビジネスパートナーという役割です。このことは部下たちも含め,いつも組織の中で伝えています。

実績を把握して正しい数字を報告するというスコアキーパーとしての役割に加え,将来の環境や現状から類推される予測をしながら経営の意思決定に資する分析をする。それをCEOとともに共有しながら,戦略,ゴールといったものを一緒につくっていく。こういうイニシアチブをとっていくことが重要ではないかと思っています。CEOに報告するという,従来の上下関係というよりは,ともに経営課題を担っていくという形に変わってきているのではないかなというふうに思います。

一方で,客観性も必要ですし,CVI(顧客資産価値),企業価値をいかに検証していくかもすごく大事なことだと思っています。また,業績の分析,管理をどのようにしていくか。これは経営のモニタリングという意味で必要だと思います。

私の場合,外に対して企業を正しく伝えていく,それから外の意見を中にしっかりと伝えるという意味で,IR活動も担当しています。市場に正確な企業価値を判断してもらうという意味でのIR活動というものも,CFOの役割の中に重要なものとしてあるのではないでしょうか。

西川氏お話を伺っていて,CFOは経営判断を行う上で,CEOと表裏一体で動くものという感を強くしました。ところで,企業価値を検証しておくことが,IR活動をする上でも非常に有効だというようにお聞きし...