「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」の解説

佐久間税務会計事務所 公認会計士・税理士 佐久間 裕幸

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1.研究報告作成の目的

日本公認会計士協会では,IT委員会研究報告「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」(以下,「本研究報告」という。)の公開草案を2015年12月9日に公表した。本研究報告は,本年1月12日までの意見募集で集められた意見を集約,整理したうえで,正式な研究報告となることが予定されている。

本研究報告は,2013年に公表されたIT委員会研究報告第43号「電子的監査証拠」に引き続いて検討されたものである。「電子的監査証拠」では,CAAT(Computer-assisted audit techniques)を利用することが,監査の効率性を高めるとともに,網羅的に検証することが可能になるなどの質的な向上にもつながることに言及している。CAATを利用することで,特定のデータ項目をサンプリングではなく,全データについて検証することができる。しかし,それは精査とは異なり,「休日や深夜に入力されたデータはないか」「入力者と承認者が同一のデータはないか」など何らかの監査的検討を行う監査手法ではあるものの,全件を証憑突合するといった監査手法ではない。本研究報告では,こうした...