監査法人に対する行政処分と会社法

筑波大学ビジネスサイエンス系 教授 弥永真生

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1 会社法と新規契約業務停止処分

金融庁は昨年12月に,ある監査法人に対して,契約の新規の締結に関する業務の停止3か月及び業務改善命令の処分をするとともに,本年1月22日に,約21億円の課徴金の納付を命じた。

これが会社法上の会計監査人の選任・解任または不再任などにどのような影響を与えるのかという問題がある。

(1)会計監査人の欠格事由

会社法337条3項1号は,会計監査人の欠格事由として,「公認会計士法の規定により,第435条第2項に規定する計算書類について監査をすることができない者」を挙げている。しかし,金融庁「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)について」「コメントの概要とコメントに対する金融庁の考え方」(平成20年6月23日)①では,「契約の新規の締結に関する業務の停止」については,「一般的には,既存の監査契約の更新のように,業容の拡大に繋がらず,かつ当該行為を禁止することにより,善意の被監査会社に与える影響が大きいものについては,禁止の対象には含まれない」とされている。そして,金融庁『公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)』においては,「事案...