書評 那須 伸裕,松本 祥尚,町田 祥弘 著「公認会計士の将来像」

(同文舘出版刊/本体3,300円+税)

 公認会計士 市川 育義

( 34頁)

我が国に公認会計士法が制定されたのは,1948年(昭和23)であり,今から60年以上も前のことであるが,公認会計士の存在及びその職業が世間に知られるようになったのはここ10年程度のことでないかと思われる。そのきっかけは言うまでもなく,社会問題となった会計不正事件と未就職者問題である。

この2つの問題については,そもそも不正事件を発生させないガバナンスのあり方や経営者育成のあるべき論とともに,会計・監査に精通している人材がもっと社会で活躍すべきとの理解が一般に浸透していないといった意見などがあり,公認会計士業界のみで対処すべきといった単純なものではないと理解している。とはいえ,本書はそのような中においても公認会計士業界関係者がまずはやるべきことを考えるきっかけになるものといえる。

本書では,この2つの問題のうち後者の未就職者問題を踏まえ,公認会計士の養成の問題を取り上げているが,その中でも指摘しているとおり,公認会計士の独占業務とされる監査証明業務は,長い歴史の中で社会に根付いた専門業務というよりも,戦後の経済復興の中で制度化されたものであり,間接金融中心の我が国経済社会においては,当然のこ...