ハーフタイム 経営者と投資家の関係

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監査基準によれば,財務諸表監査の目的は「経営者の作成する財務諸表の信頼性を保証すること」にある。よって,財務諸表を正しく作る責任は経営者にあり,不祥事を防ぐ内部統制を築く責任も経営者にあるから,会計監査における経営者はきわめて重要な人物なのである。しかも,昨年の不正会計で分ったように,経営者は自ら築いた企業統治や内部統制を無力化(override)し,公表数字を操作するパワーがある。経営者は通常,理性的かつ常識円満な人物と想定されるが,不祥事を防ぐ意識の強さや内部統制を無力化するリスクなどに焦点を当て,経営者の姿勢を把握するのは,困難だが必要不可欠な監査プロセスであろう。

マネジメント論によれば2つの経営者像が拮抗している。まず「経営者は株主の代理人」であるというAgency説(以下"A型"という)によれば,経営者は合理的経済人である。ただ,短期利益重視・機会主義的に行動するから株主の監視の目が行き届かないと自分個人の利益追求を優先すると想定され,コストがかかってもインセンティブ報酬や内部統制が必要とされている。他方のStewardship説(以下"S型"という)によれば,株主と組織の目...