IFRSをめぐる動向 第84回 公開草案「IFRS第15号の明確化」と2015年12月の議論

PwCあらた監査法人 公認会計士 井上 雅子

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1.はじめに

本連載は,主に国際会計基準審議会(IASB)の月次会議等での討議内容に基づき,最新のIFRSをめぐる動向を伝えることを目的としています。そこで,今回は,2014年5月に公表された国際財務報告基準第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下,IFRS第15号)に関して,その後に行われているIASBとFASB(以下,両審議会)の議論について,取り上げます。

IASBは,2014年5月,FASBと共同でIFRS第15号を公表し,この適用を円滑に進めるための方策として,FASBと合同で収益認識移行リソースグループ(以下,TRG)を創設しました。TRGは,新たな収益基準の導入によって生じる実務上の問題についてメンバーの見解を共有し,両審議会にその内容を伝えることを目的として,昨年11月まで議論を行ってきました。

そして,両審議会は,TRGの議論を踏まえ,異例ともいえる,未だ強制適用前の基準に係る改訂について検討を行い,IASBは,昨年7月に,履行義務の識別,ライセンスの取り扱い,本人代理人の検討等のガイダンスおよび設例の追加修正のために,公開草案「IFRS第15号の明確化」(以下,公開草...